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生活保護

生活保護…現役にも使いやすく

読売新聞より


制度分割や対象拡大を
 経済危機で失業者が急増、雇用の安全網の不備が指摘される中、雇用保険から漏れた人たちを受け止めるはずの生活保護制度も、十分機能していない実態が明らかになっている。現役世代の安心確保のために、生活保障の仕組みはどうあるべきなのか。(社会保障部 猪熊律子、小山孝、大津和夫)

八方ふさがり

 所持金わずか25円。寒空のなか、凍死しないよう一晩中歩き続ける。北海道出身の男性(38歳)は今年1月、東京都内の路上で、こんな暮らしを強いられた。

 大手自動車メーカーの下請け工場で働いていたが、昨年末に解雇され、仕事と住まいを失った。雇用保険は、加入期間を満たせず使えなかった。仕事を求めて上京したが、「住所不定」がネックとなり、見つからない。「まさに八方ふさがりだった」と振り返る。

 救いだったのは、上野公園で知り合った人から、「派遣切り」に遭った労働者を支援する団体の情報を得たことだ。団体の支援を受けて生活保護を申請したところ、認められた。今は住まいも見つけて、警備関係の仕事を探している。

 「まさか自分が生活保護を受けることになるなんて。そもそも、この年齢で受けられるとは思ってもいなかった」と男性は話す。

水際作戦

 生活保護の申請は、今年1月には前年同月比59%増の2万5298件にのぼった。非正規労働者を中心とした失業者の申請が増えているためとみられ、受給件数も増加傾向にある。

 だが、「派遣村が設けられた東京都千代田区の積極的な対応は例外。働ける現役世代の申請はなるべく受け付けないという傾向は、今も変わらない」と、ある自治体関係者は言う。「第三者を伴わず、失業者が一人で窓口を訪れた場合は受給が難しい」という声も多い。

 雇用保険は使えず、生活保護もなかなか受けられない――。非正規労働者が全体の3割を超えるなど、就労形態が大きく変化しているにもかかわらず、仕事を失った時の安全網の整備は進んでいない。

 1950年に制定された現行の生活保護制度は、「無差別平等」を基本原理に、年齢や性別、困窮に陥った原因などは問わずに受給できるとされている。だが、受給世帯のうち、働いている人がいる世帯(稼働世帯)の割合は、60年度に55・2%だったのが、2007年度には12・8%に減少。60年に77・8%だった50歳未満の受給者も、07年には33・2%にまで落ち込んだ。

 その背景には、経済成長を経て国民の生活水準が上がる一方、不正受給などが目立つようになったため、働ける現役世代の申請は極力受け付けない「水際作戦」が浸透したことがある。「制度は全員を対象にしているが、『資産や稼働能力、親族による扶養などをまず活用せよ』という原則が必要以上に強調され、近年は、現役世代が生活保護を使うことは想定されなくなっていた」と、職歴30年近いケースワーカーは証言する。

詰め込み過ぎ
 失業による一時的な生活苦など、必要に迫られた時には利用しやすく、住まいを確保して暮らしながら新しい仕事を探せるような制度にするためには、どうしたらよいのだろうか。

 「現状は、貧困になった理由や必要な支援が違う人たちを一つの制度に詰め込み過ぎている。就労支援が柱になる現役世代と、働くことは難しいが所得保障が必要な高齢世代で、制度を分けてもよいのではないか」と地方財政審議会委員の木村陽子さんは提案する。

 木村さんは06年10月、全国知事会と市長会が設置した有識者検討会の座長を務め、「新たなセーフティネットの提案」と題する改革案をまとめた。そこでは、現役世代向けは最大5年間の期限を設けて集中的に、自立に向けた就労・生活支援を行うことを提案した。就労支援よりも現金給付が必要な高齢世代については、「年金制度の中で最低限の生活を保障するのも一案」と言う。

一歩手前に
 「手持ちも蓄えもなくなって生活保護の対象になる一歩手前に、何らかの所得保障が必要だ」という意見も多い。

 日本弁護士連合会は昨年11月にまとめた生活保護法の改正要綱案に、保護が受けられる最低基準より収入が3割多い人でも、住宅費や医療費、職業訓練費などを受給できる制度を盛り込んだ。作成に携わった阪田健夫弁護士は、「こうした給付があれば、家賃を払えずに住居を失うことが避けられる。また、職業訓練を受けることで、保護となる前に生活の再建ができる」と狙いを説明する。

 生活保護制度に詳しい首都大学東京の岡部卓教授は、「仕事さえあれば生活保護を抜け出せる人向けには、就労支援はもちろん、雇用保険の拡充や、税財源で就労支援と所得保障を行う“第二の雇用保険”を創設することも考えられる。また、児童手当など各種手当の拡充も保護脱却に役立つ」と指摘。その上で、「カギは三つある。まず、雇用保険や手当を拡充して生活保護を受けなくてもいいようにすること。次に、若くても、生活保護を利用しやすくすること。最後に、生活保護の中できめ細かな支援を行って、早期に抜け出せるようにすること」と話している。

英や独、失業は別制度

 海外の所得保障制度を見ると、日本の生活保護にあたる公的扶助に年齢制限を設けたり、失業者や高齢者は事実上別の制度にしていたりする国が目立つ。

 英国の公的扶助は、16?59歳の現役層が対象。失業者には、求職活動を条件に、保険料財源や、全額税財源による手当を給付している。高齢者には、給付要件を緩めた年金制度に近い現金給付を行っている。

 ドイツの公的扶助は日本と同様、年齢制限はないが、失業者や高齢者は別建ての制度で対応している。雇用保険が切れた後も就労できない失業者に対しては、現金給付と就労支援がセットになった、求職者向けの給付を適用。高齢者には、所得審査を緩くした税財源による給付を行っている。

 フランスでは、25歳以上が対象。失業者が受給する場合は、就業努力を要件としている。

[プラスα]8つの扶助で自立支援
 生活保護は、資産や能力などを活用しても生活に困窮する人に対し、最低生活を保障し、自立を助ける制度。国が定める基準で計算される最低生活費を下回る人に対し、収入との差額を支給する。食費や被服費、光熱費などにあてる生活扶助のほか、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の八つの扶助がある。生活扶助の額は東京23区に住む33歳、29歳、4歳の3人家族の場合、16万7170円。申請手続きなどは自治体の福祉事務所で行う。財源は国が4分の3、自治体が4分の1を負担する。

 09年1月の受給世帯数は、過去最高の116万8354世帯。受給者数は161万8543人。生活保護費の総額は、2兆6225億円(08年度)。受給者の自立を支援するため、05年度から、各自治体は「自立支援プログラム」を策定することになっている。


景気の悪化から「派遣切り」「内定取り消し」「人員削減」というキーワードが
ニュースに並びます。
セーフティネットもままならず、路頭に迷う人たち。
今の時代、誰がいつこういう立場になるか、本当に分からないですね。

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