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児童虐待

児童虐待 診察でどう察知
医師の専門知識 カギ

読売新聞より


「救急の現場にも児童虐待の知識が不可欠となっている」と話す八木貴典医師(日本医大千葉北総病院救命救急センター)=横山就平撮影 相次ぐ痛ましい児童虐待事件。被害者の子どもが、過去に医師の診察を受けていたケースは多い。診察室で虐待の兆候をいかにキャッチし、悲劇を食い止めるか。医師の役割も問われている。(梅崎正直)

熱傷のある女児
 生後4か月の女児が熱傷で運ばれてきたとき、救命救急センターの医師たちは違和感を抱いた。母親は「赤ちゃんを抱いてミルクを作っていて、誤ってお湯をかけてしまった」と話したが、患部の状態とはつじつまが合わないのだ。

 母親の身なりや話し方はしっかりしていて虐待とは思えなかったが、念のために児童相談所へ通告した。

 退院から半年後、女児は別の病院へ入院した。栄養不足で体重が異常に軽かった。さらに3か月後には3度目の入院。全身にあざがあり、母親から離れ、乳児院に入所することになった。

 これは、日本医大千葉北総病院(千葉県印旛村)が実際に経験したケースだ。同病院では2001?08年の間に児童相談所へ24件の通告を行った。そのうち、虐待とは認識していないが「念のために」通告した例が7件。ところが、救命救急科の八木貴典医師が調べたところ、7件のうち5件が、その後虐待と認定され、一時保護などに至っていた。同医師は「女児のケースも、もっと早く対応するべきだった。救急現場の医師が児童虐待の専門知識を持つ必要がある」と指摘する。

 東京都が昨年9月、都内の148病院に行った調査によると、児童虐待に対応するマニュアルを作成していた病院は18・9%、虐待リスクを確認するチェックリストを設けていた病院は11・0%、虐待対策チームなどを設置していた病院は18・1%だった。増える児童虐待に、病院の体制が追いついていない。

チームで対応
 すでに、対策チームが成果を上げている病院もある。東京都世田谷区の国立成育医療センターに生後3か月の赤ちゃんが送られてきた。親は「突然けいれんを起こした」と説明したが、検査では脳損傷と軽い脳出血が見られ、疑念を抱いた医師が眼科に検査を依頼したところ眼底出血もあった。典型的な「揺すぶられっ子症候群」(強く揺すぶられることで起きる脳障害)だった。

 これは珍しいケースではないが、児童虐待の知識がなければ見落とす危険もある。同センターは02年にチームを発足させ、虐待が疑われる患者を年間60例近く取り扱ってきた。その経験の蓄積がいきている。ソーシャルワーカーを中心に各科の医師で構成され、児童相談所への通告は医師個人ではなく病院として行う。こころの診療部の奥山真紀子部長は「一人の医師が抱え込むと正しい判断をするのが難しい。病院のサポート体制は不可欠」と言う。

 開業医が最初に虐待されている子どもと接することも多い。都は開業医からの相談に答える「ドクターアドバイザーシステム」を設けている。個々の医師が孤立せず、虐待に対応できる仕組み作りが必要だ。

診察時に虐待が疑われるポイント
〈1〉あざや熱傷、たばこの火のあとなど、皮膚の多発的外傷がある
〈2〉親の説明と傷とのつじつまが合わない
〈3〉栄養不足、ひどいオムツかぶれがあるなど、必要なケアが与えられていない
〈4〉無表情、あるいは誰にでもべたべたする。親の無表情
(国立成育医療センターこころの診療部、奥山真紀子部長作成)


(つづく)
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