拡大する包括払い
読売新聞より
(上)診療を標準化 入院費削減も
病状・治療別に費用算定
病状などで1日当たりの入院費を決める新しい医療費支払い方式が、急速に広がっている。「診断群分類(DPC)別包括評価」と呼ばれ、採用する病院は1433病院、全国約9000病院の2割に迫る勢いだ。病院はどう変わるのか。現状と課題を探った。(阿部文彦)
入院日数
長野県松本市の相澤病院(471床)は、眼科を除くほぼすべての診療科をそろえる大規模な民間総合病院だ。3月初旬の夕方、病院内の一室に、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などが集まった。
「この新しいクリニカルパスを使うと、退院までの日数が短くなり、期間のばらつきも小さくなります」と、同病院診療情報管理課のスタッフが説明する。「クリニカルパス」(パス)とは、入院から退院までに治療、処置する手順を示した診療計画書のことだ。
この日は、高齢者に多い嚥下(えんげ)性肺炎についてパスを検討。従来のパスだと在院日数は28・4日プラスマイナス16・3日だったが、新しいパスでは23・5日プラスマイナス8・9日になったことが報告された。
「DPCの記録から抽出したデータを使い、パスを改良した成果が出た」と、同課の椛(かば)島博彰課長は話す。
院内の差
DPCとは、病名や症状、治療内容別のリストに従って、1日当たりの入院医療費を決める仕組みだ。2003年に導入が始まった。病院などが保険者に医療費を請求する際には、患者の入退院の情報や合併症、薬の種類や検査の回数などを、コード化して提出する。このため、特殊なソフトを使えば、大量の記録を簡単に解析できる。
総合病院だけに常勤医師は約120人と多い同病院がDPC対象病院になったのは2006年4月。DPCデータを活用し、嚥下性肺炎の患者にどのような治療が行われているのかを分析した。すると、医師により検査やリハビリの開始時期、投与する抗生剤の種類などに違いがあることが判明。これらの結果をもとにパスを改良し、昨年7月に新しいパスが完成した。
「検査のタイミングなども最適になるよう標準化した」と椛島課長。相澤孝夫院長は、「医師や診療科によって診療内容が違うことが、DPCデータであぶり出せた。データなので、現場の医師や看護師にも説得力があり、あるべき医療に近づけることができる」と、成果を強調する。
同病院では、平均入院日数を4年前に比べて2日間短縮した。疾病ごとに定額というDPCの特徴を生かし、「胃がんの化学療法なら3割負担で4万7000円」など、入院費の概算を公表、患者の利便性向上も図っている。
コスト意識
コストダウンにも寄与している。その代表が、政府が後押しをしながら進まない後発医薬品の普及だ。
03年にDPCをスタートさせた聖マリアンナ医科大学病院(川崎市)では、院内で使用する約1900品目の医薬品のうち、約220品目を、先発医薬品と同等の薬効を持つが値段は半額ほどの後発医薬品に切り替えた。通常、医薬品は使っただけ医療費を請求できる出来高制だが、定額制のDPCでは、コストを抑えないと収益が出ないためだ。
「医療水準を落とさずに、合理的な医療を推進しようという意識が強まる」と、同病院の増原慶壮(けいそう)薬剤部長は指摘する。
DPCデータを分析すれば、個々の病院の医療の中身などを詳しく比較することもできる。東京医科歯科大の川渕孝一教授(医療経済学)は「病院にとって、医療の質と経営の質を同時に高めるのは難しい。DPCデータによって、これまで医療界が経験したことのない他流試合が可能になり、両者の質を高めるきっかけになる」と話している。
診断群分類(DPC)別包括評価
病状や治療法ごとに、入院基本料、検査、投薬などの1日当たりの費用を決める制度。手術、リハビリなどは従来通り、出来高払いのまま。日数が長くなるほど、3段階で1日当たりの単価が安くなる逓減制を採用している。
医療現場での均一な医療の提供やコストを意識した仕組みが登場しています。
病院に言われるままに費用を払って来た時代から、
前もってこの治療にはこのぐらいの費用が掛かるという概算が出やすいようです。
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