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地域医療

大病院と患者データ共有

読売新聞より


 今年8月、仕事場から車を運転して帰宅する際、静岡市の木工業男性Aさん(70)は、急に頭がふらふらした。真っすぐハンドルを握っているつもりなのに、車の進路がそれる。

 なんとか自宅にたどり着いたが、妻はAさんの顔を見るなり言った。「お父さん、大変。唇がゆがんでるよ」

 急いで、かかりつけの診療所院長、岡慎一郎さんに電話したところ、「脳梗塞(こうそく)の疑いが強い。救急車を呼んで『連携安心カード』を見せ、そこに書いてある静岡赤十字病院に運んでもらうように」と指示された。

 連携安心カードは、開業医で作る静岡医師会と、市立、県立、赤十字病院など市内の公的病院が協力し、2004年に発行が始まった。患者は普段、かかりつけの開業医に通うが、年に1、2回の精密検査は、専門医のいる病院で受け、カードを受け取る。

 検査データは双方の医療機関が共有。患者は病状が急変した場合などに、カードを発行した病院で治療を受ける。開業医と病院の専門医、2人の主治医がいるという意味で「イーツー(医2)ネット」と名付けられている。

 Aさんは高血圧と糖尿病のため、約10年前から月1回程度、岡さんの診療所に通っている。昨年、超音波検査で、首を通る頸(けい)動脈が狭くなり、動脈硬化が進んでいることが分かった。

 脳卒中が心配されることから、岡さんの紹介で、静岡赤十字病院を受診。神経内科で頭部のCT検査などを受けた後、連携安心カードを受け取っていた。

 Aさんが運ばれたのは、通常の診療時間が終わった夕方過ぎだったが、以前に受診した際の検査データが病院にあり、スムーズに治療が行われた。脳梗塞は幸い軽く、点滴治療の結果、まひも残らず、約1週間後に退院した。

 大病院に患者が集中し、病院勤務医の過重労働が問題になっている。解消するには、病院は入院を中心とした専門的な医療、診療所は外来診療と、医療機関の役割分担が欠かせない。だが、患者の大病院志向には、信頼できる開業医が見つかりにくい実情もある。

 このカードの利点は、患者は日ごろ開業医にかかり、病院の専門医ともつながる安心感を持てることだ。「医療側も、情報の共有で、診療所から病院への患者の紹介、病院から診療所への『逆紹介』がしやすくなった」と岡さんは話す。

 読売新聞は先月、医師不足などによる医療崩壊を防ぐため、改革への提言をまとめた。「医療機関の役割分担と連携強化」は、対策の柱の一つだ。医療機関が協力し、地域医療を支える取り組みを紹介する。


(つづく)
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